ADHDタイプさん(以下、ADHDタイプ)の片づけについて書きたいと思ったのは、
離婚した元夫がADHDタイプで、
ずっと苦しんできた姿を見ていたから。
(※受診はしていなかったのでADHDタイプとしておきます)
忘れ物をする、物をなくす、探し物が見つからない・・・
これが「たまに」ではなくて「日常」である事が自己肯定感を下げている、と感じていました。
ADHD当事者が書いた本や精神科医が書いた片づけ本を読んで、
ADHDタイプにとって、片づけで得られるメリットはとても大きいと感じました。
毎日の自分を責める出来事を少し減らせる事。
それが、ADHDタイプにとって大きな力になると思います。
本で学んだ事と、元夫との経験も合わせて書きたいと思います。
はじめに
最初にお伝えしておきたい事がひとつあります。
発達障害はあくまで凹凸症候群であり
片づけが苦手であったとしても、人より優れた所が沢山ある、という事。
元夫も、とても知的レベルが高く優秀な人でした。
飽きっぽいからこそ、フットワークが軽くて、次々色々な事ができる。
短時間いっきに集中する事ができ、とても容量よくインプットしていました。
なんでもできる、うらやましい人。
でも彼自身は、自分はきちんと決めた事をできない、
いつも忘れ物・無くし物をする、ダメな人間だ、と思い込んでいました。
そして、そんな自分に嫌気がさし、定期的に心が落ち込む波に襲われていました。
凡人の私から見ると、
普通の人ができる事が当たり前にできなかったとしても、
普通の人以上にできる事があるって、すごい事だと思います。
不得意な事ではなく、せっかくある優れた才能の方に目を向けて欲しいと思っていました。
なので、
ADHDタイプの人は「片づけをするべきだ!」なんて決して思っていません。
ただ、片づけられない事によって自分を苦しめないで欲しい、
「自分にもできる」という自信を持って欲しい、という思いで書いています。
片づけが苦手な理由
ADHDタイプにとって「片づけられない」のは性格の問題ではなく、
片づけにどうしても不利な脳の特徴、脳のクセを持っているから。
自分がだらしないとか、意思が弱い人間だから、という事ではないのです。
その脳の特徴って何かと言うと、
ワーキングメモリー(作業記憶)が小さいという事。
脳が「今これをやっている」ということを覚え続けていられず
「今やろうとしていること」を覚えているメモリーが
新しく入ってきた刺激によって抜け落ちてしまう。
それによって目の前の物事に関心が移り、片づけも中途半端に終わってしまいます。
(※ワーキングメモリーは鍛える事ができるそうです)
次に、マルチタスク(同時並行処理)が苦手である、という事。
どれを一番最初にすべきかわからず、好きなことに目がいってしまう。
そのうち、他のことを忘れてしまう。
これはワーキングメモリーの弱さも関係しています。
そして、不注意、衝動性、多動性。(人によって目立つ部分が違います。)
◇不注意→すぐに気が散り、集中力が続かない。
先送りし、取りかかれない。
◇衝動性→思いついたららすぐ行動しないと気がすまない。
順番通りに進められない。
◇多動性→じっとしていられない。
片づけ始めても他のことに注意がむき、気が散ってしまう。
絶対片づけに不利じゃん!!と泣きたくなりそうですが、
そもそも片づけのハードルがとても高い事を知って、
自分を責めず、人と比べず、自分に合った工夫やシステム作りが大事になります。
そして、少しでも実行できたら自分を褒めてほしいと思います。
自分にとって、とてもストレスが大きい事をやっているわけですから。
片付けの目的
人は、目的がない行動はできません。
まずは目的を考える事が大切になります。
ADHDタイプ向けの本に書かれていた片づけの目的は
「生きやすい部屋」を作る事。
物がなくなりにくい部屋。
必要な物がすぐに出てくる部屋。
自分の事を好きになれる部屋。
散らかっていても死なない。
でもどうして片づけをしなければならないと思うのか?
どうして散らかっている部屋が嫌だとか感じるのか?
一度考えてみて頂きたいと思います。
ADHDタイプは何かしらの困りごとが生じている場合が多いと思うので
その困りごとを解決する、という事が目的に繋がると思います。
どうしたら片づけられる?
やる気スイッチ
私自身は片づけが好きなので、
スイッチいるのか?と思いながら本を読んでいましたが、
好きでもない事のために時間も労力も使うには、まずここからですね。
本で紹介されていたやる気スイッチを入れる方法をいくつか紹介します。
1.どちらの気分がよいか考える
ADHDがあると、そうでない人より「ダメな私」と落ち込むことが多いのです。
すぐに片づけて、よい気分になりませんか。
2.「〜したい」と言ってみる
義務だと思うとやる気にならないけれど、好きなことならできるのがADHD。
たとえ本心ではなくても「部屋を片づけたい」と声に出して言ってみましょう。
声に出すことで、情報が耳から入り、その気になりやすいのです。
3.よい結果をイメージする
何のためにするのか、これをするとどんな結果になるのかイメージしてみましょう。
キッチンがきれいになる、次の料理がしやすくなる、など具体的にイメージすることで
やる気スイッチが入りやすくなります。
(※参照 司馬理英子:「大人のADHD」のための片づけ力)
もうひとつ、別な本で紹介されていた事が、
やる気が起きなくてもとにかく動き出す、という事。
人は、やる気があるから行動するのではなく、
行動することでやる気がわいてくる生き物だそうです。
片づけの必要性を認める
片づけを実行するために、どうして片づけが必要なのかを整理します。
散らかっている部屋は物をなくすだけでなく、「時間」も「空間」も失います。
知らないうちに、いろいろな困りごとが生じているはずです。
❀散らかっていると困ること
・ものをなくす→もの探しに時間をとられる
・友達を家に呼べない
・家族を怒らせる→人間関係にひびが入る
・スペースをとられる
・落ち込む、イライラする
・生活に支障をきたす
・埃が多い
・リラックスできない
(雑然とした状態では深い眠りにつけず、疲労が溜まる。
睡眠時間を確保できなければ自律神経が乱れて情緒不安定になります。)
片づいた環境をつくれば、生活しやすくなり、目に見える形でよい結果が得られるはずです。
西原三葉さん(ご自身もADHDの整理収納アドバイザー)の本で5つのKが紹介されていました。
❀片づけるとよいこと
・経済:ものを管理できるようになり、ムダ買いやダブリ買い、衝動買いなどが減る
・空間:居住スペースに余裕が生まれる
・気持ち:スッキリしてストレスのない精神状態になれる
・健康:片づけが進むと掃除もできるようになり、衛生面でもメリットが生まれる
・関係性:もの探しによる遅刻が減ったり、社交的になったり、人との良い関係が築けるようになる
そして一番のメリットは、家族に責められたり、自分自身を責めたりせずにすむこと。
精神的に安定し、自信をもって生活することが可能になります。
先延ばし対策
ADHDの人が先延ばしにしてしまうのは、先の見通しを立てることが苦手だから。
そして、先延ばしにすればするほど追い込まれて、
心の壁が高くなるため、ますますやる気がなくなっていく、という悪循環に陥ります。
先延ばしを防ぐには「スイッチワード」を使う!という事を
西原三葉さんが紹介されていました。
行動をオフからオンに切り替える「スイッチワード」を唱える、というもの。
西原さんの場合には「あとでやる」と思ったら「今すぐやる」に
心の中で言葉を変換するようにしているそうです。
さらに、「めんどくさい」と思い始めたら
その場で立ち上がって腕をふって「とにかく動く!」と声に出す。
立ち上がったら何かをやらざるをえない気分になるし、声に出すことで自分に活が入る、と。
すごい意思の強さだな!と思いませんか?
でも、西原さん自身が沢山の苦労をされたからこそ、
先延ばしでどれほどイタい目にあってきたか・・・と自分を奮い立たせて動いているようです。
また、「どうせやるなら、きちんと!」という完璧主義の人も多い事が、先延ばしの原因にもなりがち。
大切なのは「行動のハードル」を下げ、
「できることだけやればいい」という楽観思考です。
飽きる対策
ADHDの脳のクセのひとつに、「報酬遅延の障害」というものがあります。
報酬(ごほうび)が遅いと我慢できない、
長期間続けないと結果が出ないものに対してがんばり続ける事が苦手、というもの。
対策は、
最初のハードルを思いっきり下げること。
そして、ごほうびシステムを取り入れる事がADHDタイプの人には大事になります。
まずは5分からでOK。
たとえば、
ゴミを3個捨てる、床に落ちているものを拾い上げてもとに戻す、玄関の靴を並べ直す、など。
続くようになったら10分、15分…と延ばしていきます。
そして、過集中を防ぐためにもタイマーを使う事が勧められています。
タイマーした事自体を忘れてしまわないために、
あと5分、あと4分…とカウントダウンしてくれる声のタイマー(アプリ)が良いそう。
ADHDタイプは情報を次々に整理することが苦手であるため、
一度に沢山行うと脳が疲れてオーバーフローになってしまいます。
冷蔵庫の中の1段だけ、机の上のペン立てだけ、など狭い場所から始めるのがコツ。
そして「やれた!」「このくらいならできる!」という小さな達成感を積み重ねる事が大切になります。
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