制限と向き合って生きる 〜患者様から学ぶ事〜

リハ職での学び

ケガ、体・心の病気・・・

色々な制限と向き合っている患者様達は沢山の工夫と対処をしながら生活されています。

制限があるからこそ、物、心、時間の整理が必要になります。

患者様達からの日々の学びをシェアしたいと思います。

環境を整える

リハビリの仕事のひとつである、環境設定。

その方の身体の状態、行動パターンから

どうしたら安全な生活が送れるか?

効率良く動くにはどうしたら良いか?

こちらで考えて、配置換え等を提案させて頂きます。

歩く時に邪魔になる物は片づけてもらったり、

ベッド周りを整理してもらったりします。

でも、提案通りに受け入れてくれる方と、

「嫌だ。」と言う方がいます。

その「嫌だ。」の理由を聞いても「とにかく嫌だ。」の返事。

無理に変えても、やっぱり直して!と戻す事になります。

明らかに非効率で動きにくくても、そのままで良い、と。

うまく言葉で表現できない「嫌」の正体は

自分がしっくりくる空間、好きな空間じゃないのでしょうね。

こちらが思う快適と、患者様自身が思う快適は違います。

それは、身体の制限の有無は関係なく存在しているんだな、と思い知らされます。

こんまりメソッドでも自分のときめきを押し付けない、と教わりました。

訪問リハビリの仕事をしていて、その通りだと実感します。

大切なのは本人がどう感じるのか。

試しにやってみて!と半ば強引に変えてみて

「いや〜意外と良かったわ!」という時もあります(笑)

その場合はただ変える事を恐れているだけだったり

変えたらどんな感じか?イメージができていないだけだったりもするので

試してみる事も大切になります。

心を整える

倒れて救急車で運ばれ、病院で目が覚めたら身体が動かなくなっていた・・・

突然の難病宣告・・・

患者様たちは、絶望から長い時間をかけて、

制限がある身体を受け入れて生きています。

そのまま鬱になってしまう方もいらっしゃいます。

どの段階で障害を受容するのかは、本当に人それぞれ。

乗り越えられなくても、今の身体を否定せず、

受け入れている方が心穏やかに暮らしているように見受けられます。

「今の生活で困っていることは何かありますか?」と聞くと

同じ片麻痺さんでも

「こっちが動かないからね・・・片手じゃ何もできないの。」という方と

「別に何も無いね。」という方がいます。

絶対大変だよね?という身体の状態でも、何も困って無いと言い切る方は結構います。

この違い、ってなんだろう?と考えながら患者様達と関わっていて、

気づく特徴がいくつかあります。

それは

  • 人と比べず自分自身と比べている事
  • 自分を信じる事
  • 過去の自分に執着しない事

人と比べず自分自身と比べる

自分と同じ病気の人、違う病気の人・・・

他人と自分の状態を比べて落ち込み、そこから頑張る気力を失ってしまう方もいます。

人と比べず努力できている方は、少し前の自分と比べています。

大事な事は、

以前とは違う自分の身体を知る事。

自分自身の身体を研究し尽くしている方は、

自分の変化にも敏感で、改善を認める事ができています。

身体の使い方も心得て、

障害が重くても工夫して上手に動くことができる事を教えてくれます。

人と比べても良くなるわけでは無い事を落とし込むまでに

何度も何度も心の整理をしてきているのだと思います。

自分を信じる

私達は、病気について学び、

ある程度の期間で改善が思わしくない方はそれ以上の回復は難しい、

という事を知識として知っています。

「もう良くならないのかな?こんなもの?」と聞いてくる方と、

こちらに意見は求めず

「もっと良くなると思うんですよね!」と根拠のない自信で溢れている方がいます。

そして実際に努力し続け、

回復できる期間を過ぎても良くなる方を目の当たりにする事があります。

自分を信じて努力し続けられる意志の強さ、本当に尊敬します。

そんな方は、必要な情報だけを自分で選択しているように感じます。

私達に聞いてくるのは、

自主トレ内容の相談や、困っている事の解決方法など。

しっかりしている方ほど、一般的にはどれくらいの期間で良くなるのか、

あの人はどれくらいでここまで来たのか、

リハから見て治ると思うか、など質問されます。

それを聞く事で、「あ〜じゃあもうこんなものかもしれない。」と

自分に見切りをつけてしまっているように感じます。

知識としての情報も、自分の不安材料になってしまうのなら

入れない選択肢をとった方が良いと感じます。

過去の自分に執着しない

「いつになったら元の身体に戻るんだろう?」

「すっかり治らないと何もしたくない。」

「こんな身体じゃ何もできない。」

患者様達が頭の中で考えている「治る」は

「病気の前の状態に戻る」こと。

それは難しい事も多くて、

私達は状態が安定して安全に日常生活を送れる事を目指しています。

「治る」ではなく「良くなる」事が大事。

「治る」事を目指していると完治できない事に苦しみます。

お医者様が完治できない事を話さずにいる事が多いため、

患者様達はさまよい続けてしまいます。

良くなってからリハビリするから今はやらない、という方は結構います。

動かない身体と向き合うのが辛いのでしょうね・・・

片づけでも大切なのは「過去の執着を手放す」こと。

誰でも何かを手放すときは抵抗があるもの。

でも、過去の自分をいったん手放して

今できる事に集中している方が一歩ずつ前に進む事ができています。

そして努力によって獲得できた能力により

今の自分を少しずつ認められるようになっていきます。

患者様達の「ほら見て。これできるようになったんだよね〜」

の笑顔は最高です。

できるのが当たり前だった過去ではなく、

できなくなった事をひとつでもきるようになった事実を見ることが大切です。

時間を整える

身体が思うように動かなくなった時、

1日に使えるエネルギーの限界値が大幅に減ってしまいます。

どこにどれだけのエネルギーと時間を使うのか、

時間の整理がとても重要になります。

着替えに1時間近くかかって疲れてしまう。

トイレに行くだけでも息が切れて休まなければいけない。

元気な時に当たり前にできていた事ができず、

苦しい思いを強いられる事になります。

今できる事を最大化するためにも、

生活を組み立て直す必要があります。

職場の研修で、

キャパシティを明確にして

「したいこと」「しなければならないこと」を

明確にする事が大事だと教わりました。

障害が重くても笑顔で過ごすことができている方は

「したいこと」にエネルギーを注ぎ

キャパを超える事は上手にヘルプを求めることができているように見えます。

誰にとっても、時間は有限。

患者様達と話しながら、自分もいつも考えさせられています。

残った機能を大切にする

制限がある身体でも

「困ってる事は何もない。」と言う方は

「だって、できる事しかしないもの。」と話されます。

「できない身体だから諦めている。」

ではなく

「やらない選択を自分でしている。」

という意味にハッとさせられます。

頑張らないとできない事を無理してやらない選択は

今の自分を否定しない事にもつながります。

自分もしんどくなった時、

「できる事だけやればいい。」

という事を思い出すようにしています。

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